イベント参加報告
2015年学会・研究会・セミナー参加報告
JRC2015学会参加報告 超高精細CT
2015年4月18日午前11時から約50分間、満員御礼のAnnex Hall F203+204室において多くの人が注目する中、国立がん研究センターの研究班5名により衝撃的なX線CT画像が提示されました。
これまでのCT画像を一目で明らかに凌駕していることが解る超高精細臨床画像。そして、まだ一部であるとしながらも、それを裏づけるような物理データやファントム画像。この会場にいた誰もがこれからのCT分野における明るい未来を想像したのではないでしょうか。そして、放射線診断医からも、微細な構造や形態評価に関わる多くの画像診断が変わる可能性を秘めているとの意見もあり、臨床装置としての普及に大きな期待が込められました。
この東芝メディカルシステムズ社製の超高精細CTは、Aquilion ONE ViSION Editionをベースに、検出器は0.25mm×128列、チャンネル数は2倍、X線管球は0.6mm×0.6mmの焦点サイズをもつ新X線管球で構成されていました。最小スライス厚0.25mmであるこのCTは、まだ仮称ということですが、QDCT (Quarter-pixel Detector CT) と呼ばれていました。
胸部領域の発表では、サーフロー留置針を用いた内腔の描出評価が示され、MDCTでは難しい24Gの内腔描出も、QDCTでは可能となっていました。また、肺野病変のQDCTによる臨床画像が提示されていましたが、その精細な末梢描出にただ驚き、従来のMDCT画像との対比がQDCTのポテンシャルの高さをより鮮明にしていました。
ただ、やはりこのような超高精細CTを臨床応用するにあたり、被ばく線量の増加や線量分布の変化などが懸念されます。そこで、胸部領域において ImPACT MC やモンテカルロ法を用いたシミュレーションの検討が報告されていました。結果、大幅な線量増加は認めないとなっていましたが、今後はより詳細な線量特性や臨床画像ベースの検討が必要であるとの見解でした。
心臓領域の発表では、血管狭窄ファントムおよびステント内腔評価用ファントムの検証データや実際の臨床データの報告となっていました。特に目を奪われたのは、ステントファントムのMIP画像で、ストラット構造が詳細に美しく描出されていました。臨床画像においても、内径2.25mmステント内の詳細な評価の可能性が示されていました。
見えすぎてしまうことにより、モーションアーチファクトなどが目立ってしまうなどの弊害についての議論もありましたが、今まで評価が難しいとされていた3.0mm以下のステント内腔評価の可能性に大きな期待を感じました。
頭部領域では、脳腫瘍を対象にした頭部CT Angiographyの臨床検討が示されました。
1024×1024マトリックスで再構成されたVolume dataから作成したVR画像では、前脈絡叢動脈やレンズ核線条体動脈なども含めた極めて細い血管の描出に驚きました。まだ研究段階であるとしながらも、脳外科医からは今までのCTで見たことのない血管が見えるとの話も出ているようで、これまでよりも詳細な術前支援画像が提供できる可能性が示唆されました。
そして会場にいた人たちも、座長も、興奮が収まらぬまま、本セッションは終了となりました。
このQDCTが早く、そして広く臨床現場に普及されることを切に願い、僭越ながらJRC2015学会参加報告とさせていただきます。
聖マリアンナ医科大学病院 画像センター 小川泰良