イベント参加報告

2015学会・研究会・セミナー参加報告

2015.04.25

JRC2015レポート

学会名:第71回日本放射線技術学会総会学術大会(JRC2015)
     2015国際医用画像総合展(ITEM)

開催場所:パシフィコ横浜
開催期間:2015年4月16~19日(木曜~日曜)

私が今回興味深かった内容は、トモシンセシスとシステムネットワークに関する話です。
トモシンセシスの被ばくは一般撮影の約3倍、CT検査に比べ約1/10とされています。トモシンセシスは広いダイナミックレンジと情報収集方向の違いにより金属アーチファクトの影響が非常に少なく、荷重による負荷をかけた状態での撮影も可能で、検査も簡便であることがメリットです。最近はトモシンセシスも逐次近似法が導入され、従来のFBP法より金属アーチファクトが低減され、整形外科の術後撮影、経過観察に力を発揮する検査だと思います。デメリットとして胸部を例に挙げると、肋骨や血管影との重なりによる目的部位の検出能低下があります。その点はCT検査のMPR再構成ですとそのような重なりに対する検出能の低下がありません。

現在再度普及しつつあるトモシンセシスは上記したメリット、デメリットを考慮し、検査目的に応じて一般撮影、CT、トモシンセシスを選択することでより安全で質の高い医療の提供に繋がり、今後一般撮影・CTと肩を並べる検査のひとつであると思います。また今回のITEMで、あるメーカーより一般撮影のFPDを用いてトモシンセシスが可能になったと報告もあり、今後より一層注目される検査だと感じました。

次に、これからさらに必要性が高く、拡大していくネットワークシステム。Cloudシステムはすでに世間の中でも認知度が高く、主流となってきていますが、今回の学会期間中に注目したものは、「VNA(Vendor Neutral Archive:ベンダー中立アーカイブ)」というものです。これは複数のベンダーのPACSから得られた医療画像情報について、中央処理化された標準ベースのストレージを可能にする情報技術プラットフォームとなっており、他施設を含む様々なベンダーのPACSと接続し、そこから画像を取得するツールとして機能することが可能となっています。現行のシステムでは、医療業界の画像保存の標準義務が10年から20年と長期期間にわたるようになってきたため、各医療機関にとっては膨大なデータの保存が大きな課題となっており、医用画像を安全に保存・検索し、シームレスに統合するニーズに対応することが困難な状況でありますが、Cloud技術とVNA技術はこれらの諸問題を解決し、CT画像も含め今後急速に増え続ける膨大な画像データの管理、保管、検索、安全に院内・法人内・地域間の診療において画像情報をシェア(共有)する仕組みが可能となります。

VNAはアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアで主流になりつつあり、国内では2016年より運用を開始する施設があるそうです。日本のこれからの医療ネットワーク、地域連携システム等に大きく影響すると考えられ、今後注目のネットワークシステムであることは間違いないと思われます。

その他の話題で面白いと感じたものが3Dプリンターの活用です。3Dプリンターは世間的にも話題性が高く、医療分野では術前計画や手術シミュレーション、患者説明、若手医師への教育等で利用されていますが、それだけではなく臓器を3D化することにより、技師自身の教育にもなるということを今回聞きました。3Dプリンターで出力しなくてもCT撮影後、ワークステーション上で3Dを作成し、あらゆる方向から観察することが可能ですが、微妙な奥行や重なり具合、カーブ具合等が実際に触れること、肌で感じることでしっかりと認識し頭に残る。医師は手術等で実際の臓器に触れているため頭の中には構造を含めたすべての知識が入っているが、技師はそうではない。細かな情報ではあるが、それらを知った上で3DCT画像を作成することで、手術をより意識した支援画像が提供できるようになるとのことでした。確かに我々技師は画像上では何回も見て、知っている知識を駆使し画像作成を行っているが、「百聞は一見にしかず」今作成しているそのモノを実際に触れて知識として持っていることでより信頼の高い画像提供ができると感じました。今後医療界も3Dプリンターを活用した話題が増えてくるだろうと思いました。

最後にJRCは昼間4日間だけでも大変勉強になる学会ですが、毎晩様々な場所、グループで集われている宴もとても貴重な時間を過ごすことができます。全国からたくさんの人が集まり、日頃聞けないような話(雑談含め)を聞くことができ、自身の成長、モチベーション向上、ストレス解消等メリットがたくさんあります。デメリットとして挙げるとすれば、自分の体力や呑み力をしっかり見極め行動しないと、お財布だけではなく、身体にも大ダメージを喰らい、昼間の学会に影響を及ぼすことになりかねないので注意が必要です。そこさえ注意すれば、コミュニケーション・飲み二ケーションを最大限に活用することで、ベクトルの同じような人たちとたくさん繋がる最高の機会(チャンス)なので是非とも昼間だけではなく、夜の横浜JRCへも参加してJRC全てを楽しむことが大切だと私個人は思っています。

報告は以上とさせて頂きます。また皆様により良い報告ができるよう今後とも努力して参りますのでどうぞよろしくお願い致します。


医療法人鉄蕉会 亀田総合病院

小野 雄一朗



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