イベント参加報告
2022年学会・研究会・セミナー参加報告
JRC2022参加報告(オンライン参加)
2022年4月14日(木)〜17日(日)に第78回 日本放射線技術学会総会学術大会 (JRC2022) が開催されましたので、参加報告をさせて頂きます。
上記期間中は、パシフィコ横浜での現地開催、5月18日(水)まではオンデマンド配信のハイブリットスタイルで行われました。本来であれば、現地に赴いて空気感を体感したかったのですが、勤務の都合等により参加できませんでしたので、オンデマンド配信を介して各講演を拝聴しました。コロナ禍となり3年目を迎え、webを介した学会の開催・参加がスタンダートとなっている中、まず私が驚いたのは、現地での開催期間が終了直後にほとんどの講演がオンデマンド配信なされていることでした。さらに画質や音質も支障がありません。従来ではなかなか実現が難しかったことを成し遂げていることが、知識・技術の進歩であると実感しました。どのプログラムも大変魅力的であり、私にとって勉強になることが多くありました。本来ならば全てを紹介したいのですが、今回の参加報告では、特に私が印象に残っている2つの講演について紹介したいと思います。
まず1つ目は、撮影部会(CT)が企画した「ワークショップ:CT撮影における標準化改訂に向けて」についてです。こちらは、CT撮影に携わっている方であれば、ご存知の方も多いかと思いますが、CT撮影における標準化の試みは、約15年前から始まっており、“GuLACTIC”というガイドラインの名称でもよく知られています。2015年に改訂第2版が発行され、現在次の改訂作業が進んでいるということで、全体の改訂のポイントや各撮影領域(頭部・頭頚部領域、腹部領域、循環器領域、救急領域)における具体的な方向性について話がありました。
このワークショップの前には、教育講演として、学術研究班の監修を務めている井田正博先生(水戸医療センター)から「放射線診断専門医が求めるCT検査の標準化」というタイトルで、なぜCT検査に標準化が必要なのか?ということをとてもわかり易く解説していただきました。現在の日本の医療・福祉制度、少子高齢化、年金制度、そしてCT・MRIの保有台数の多さ、放射線診断専門医・診療放射線技師の不足、といった様々な問題を抱えている中で、それを解決する1つの手段としてCT検査の標準化が必要であると述べていました。1つ例を挙げると、日本はCTの人口あたりの保有台数が世界一多く、大規模病院から小規模病院、さらにクリニックまで広く普及しています。患者さんにとってはとても利便性が良く、メリットが大きいですが、一方で放射線科医や我々診療放射線技師にとってはとても負担が大きくなっています。そのためCT検査の質を担保するためには、どの施設のどのCT装置で撮影を行っても、一定のレベルの画質や適正な被ばく線量が求められます。これを実現するための1つのツールが、今回取り上げた“CT検査の標準化”であると述べていました。CT検査の標準化については、その必要性は個人的には理解していたつもりでありましたが、これまでとは違った視点で捉えることができ、改めてその重要性について感じた次第です。
学術研究班の班長は、当ユーザー会の高木卓代表が務めており、改訂の全体像について紹介していました。今回の改訂のポイントとしては、前回取り入れられなかった、逐次近似(応用)画像再構成や低管電圧撮影、dual energy撮影といった、近年の新しくCT撮影に取り入れられた技術も採用される予定です。各撮影領域においても新しく項目が追加され、我々ユーザーにとってさらに使いやすいようなガイドラインができるのではないかと予感しています。実際に我々の手元に届くのは、もう少し先になるかと思いますが、完成を楽しみに待ちたいと思います。
次に紹介する講演は、実行委員会企画「プレゼンターの新常識」(熊本大学病院 池田龍二先生)です。こちらの講演は、直接CT検査とは関係しないかもしれませんが、我々は様々場面でプレゼンテーションをする機会がありますので、その際に気をつけるべきことを解説しており、とても参考になりましたので紹介させていただきます。
講演では、スライドのデザイン、発表の際の言語コミュニケーション、非言語コミュニケーション、環境・道具の4点に焦点を当てて実践的なテクニックを解説していました。特に最近はオンラインプレゼンテーションを行う機会がありますので、その際についても注意点を取り上げていました。少し内容を紹介すると、人と人がコミュニケーションを図る際には、有名なメラビアンの法則にあるように「言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%」という割合で相手に印象を与えると言われており、言語よりも見た目が重要であると言われています。しかし、オンラインプレゼンテーションでは、対面でのプレゼンテーションとは違って、演者の姿は隠されていることが多いので、こういった場合には、聴覚情報の重要性が増してきます。つまり、話し方や話している内容がより大事となってきています。声の大きさや話すスピードに配慮して、雑音となるもの(例えば、え〜、あの〜といったフィラーワード)を排除することが重要であると述べていました。そのためには発表前の入念な練習やリハーサルが大事になってきます。私自身も、いつも時間に追われて発表スライドを作成し、プレゼンテーションの練習を疎かにしてしまっているので、今後のプレゼンテーションに際してとても参考になる内容でした。
キヤノン社製のCTに関しては、ディープラーニング技術を用いて設計した新しい超解像画像再構成技術Precise IQ Engine (PIQE) や被ばく低減技術SilverBeam Filter、そしてガントリやコンソールのシステムが一新された、新しい80列CT Aquilion Serveなど、新しい情報・技術が多くあったと聞いています。しかし、私自身が探した限りでは皆様に紹介できるほど詳しい情報がありませんので、他の方からの参加報告やキヤノンからの情報提供を待ちたいと思います。CTの技術進歩は目覚ましく、今後も目を離せないことは間違いないかと思いますので、キヤノンCTユーザー会としてもユーザーの皆様に有益な情報を提供してきたいと思います。
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 放射線部
川内 覚