イベント参加報告
2022年学会・研究会・セミナー参加報告
画論 29th The Best Image 参加報告
2021年12月19日に毎年恒例の画論が開催されました。今年も昨年同様オンラインでの開催となりました。しかし、例年と同様に数多くの応募があったようで、どの部門も臨床的に有用な大変勉強になる報告ばかりでした。私からは当院の入賞もあったAquilion Precision部門について参加報告をさせていただきます。その他の部門や画論全体の様子については平塚市民病院 藤代 様が詳細にご報告いただいていますのでそちらをご覧ください。
今回Aquilion Precision部門では3演題が入賞となりました。その中で最優秀賞は藤田医科大学病院の『Monckeberg様硬化症伴うClassical Giant cell arteries』です。当院でも巨細胞性動脈炎の診断のためのCTAはAquilion Precision導入後に明瞭に描出が可能になり増加した検査になりますが、本報告ではより描出能を高めるためにポジショニングにも注意を払い、再構成にAiCEを用いることで微細な血管構造や炎症所見、石灰化を明瞭に描出し、診断や生検部位の同定に有用であったとのことです。来院時に行われた従来CTとの比較ではAquilion Precisionの画像は高精細に浅側頭動脈を描出できており、その違いは一目瞭然でした。また実際の標本画像を提示されており、画像所見と同様で説得力がありました。微細な構造を明瞭に描出したこの報告はまさにAquilion Precisionの真骨頂を見た感じで、改めてこの装置のポテンシャルの高さを感じた報告でした。
続いてはテクニカル賞を受賞した国立がん研究センター 中央病院の『外陰がん』です。この報告は発症頻度が低く「希少がん」とされる外陰がんの手術支援のために動脈だけでなく、静脈、リンパ節を詳細に描出した報告になります。骨盤付近の微細な血管を描出するため低管電圧を使用し、増加する画像ノイズに対してはAiCEを用いることで解像特性を維持しつつ、低減をすることができたとのことです。またVR画像での静脈の描出向上のためにCE boostを使用し、明瞭な画像を作成していました。CTでの静脈の描出というのはなかなか難しいところですが、とても明瞭に描出することができていました。また静脈相-動脈相でCE boostを行うことで静脈の造影効果だけを向上させるアイデアには感心しました。静脈描出のために低管電圧やCE boostなど撮影技術やアプリケーションを余すことなく利用したまさに“テクニカル”な報告でした。
次に当院からの入賞となった『脳腫瘍手術支援 Multi modality fusion』をご紹介します。この報告は脳腫瘍術前の手術支援画像でAquilion Precisionによって頭蓋内の腫瘍近辺の微細な血管描出を可能にし、さらにMRIとのfusionで脳表や腫瘍、神経の情報をより詳細に表現したものになります。各モダリティの描出の得意な部分を利用し、腫瘍・血管・骨・神経などの位置関係がより分かりやすくなる画像作成を行っています。本報告も低管電圧を使用し、より微細な血管構造の描出向上を図っています。Aquilion Precisionによる頭部CTAは当院の脳外科医にも大変好評で術前のCTAは“Precision指定”で行っており、「従来のCTには戻れない」と言わせるほどです。開頭方法などに迷った際は脳外科医とも相談し、情報共有しながら作成することでより手術支援に有用となる画像作成を行っています。
今回のAquilion Precision部門の報告を拝見して、共通していると思ったのは“リアルに近い画像の提供”ではないかと思いました。今回の報告は生検や手術支援の画像でしたが、Aquilion Precisionによって高精細に構造を描出することで実際の手技の際に見えるものにより近い画像を作成していたのが印象的でした。従来のCTでは難しい微細な構造を描出できることで、リアルに近いシミュレーションを行うことができ、安全な手技の実施が可能になるのではないかと感じました。このような支援画像が求められる中でAquilion Precisionの有用性はさらに高まるのではないかと感じました。またそれと同時に画像作成には放射線技術だけでなく、より臨床的な知識も必要となります。今回の画論ではまだまだ知らないことも多くあったので、この装置のポテンシャルを活かすためにも、より知識を広く深くしていきたいと感じた画論となりました。
杏林大学医学部付属病院
清水裕太