イベント参加報告

2019学会・研究会・セミナー参加報告

2019.07.28

日本CT技術学会第7回学術大会参加報告 「早起きはとってもお得!!」

6月22日(土)に「高い創造性、最高の成果High creativeness,Best output」をテーマに日本CT技術学会(JSCT)第7回学術大会が熊本市で開催された。小生がJSCTに参加するのは今回が2回目である。これまで、他の行事と日程が重なりなかなか参加出来ないでいたが、今年は予定が空いてる! ⇒ でも、熊本市での開催!!旅費が心配? ⇒ 意外に安い!! ⇒ 参加を決定 ⇒ ポチッとツアー予約!!ちなみに、1泊2日のツアーを取ったので、自宅出発は午前4時20分(幸いにも夏至の日だったので、外は明るくて涼しい)、リムジンバスが最寄り駅4時45分発、羽田発6時25分の飛行機で熊本に向かい、会場到着はちょっと遅刻の9時35分となった。


今回のJSCTのプログラムは、口述発表演題が12演題、ポスター発表が27演題の計39演題、教育講演2講演、Special Focus、招聘講演、特別講演、ランチョンセミナーと盛りだくさんの内容であった。


ちょっと遅刻したが、教育講演1、大阪ハイテクノロジー専門学校の星野先生の「臨床研究のすすめ」から拝聴した。臨床研究のきっかけを探すのは、皆さん苦労しているのではないでしょうか?星野先生からは、日常の工夫や気付きをまとめ、先行研究について調べ、先行研究に疑問点があれば研究を進めることが第1歩であるとお話しをされました。また、行き詰ったときは、発想の転換も必要なんだそうです、とても参考になる講演でした。


口述発表で興味深かったのは、「Metal Artifact Reductionアルゴリズムを適用した頭部 3D-CT Angiographyによる脳動脈瘤クリッピング術後の評価:パターンとピットフォール」でした。この発表は、頭部3D-CTAによる脳動脈瘤クリッピング術後評価に対してキヤノンCTが搭載するsingle-energy metal artifact reduction : SEMARのon/offのVR画像の整合性について、比較対象をDSA画像、手術記録もしくは手術ビデオのいずれかとして評価していました。視覚評価の結果、VR 画像には偽狭窄と偽動脈瘤の 2 つのパターンが認められ、偽病変の出現は SEMAR off よりもSEMAR onで多く認められたとの報告でした。結語では、「脳動脈瘤クリッピング術後評価に施行された頭部3D-CTA に SEMAR を適用した VR 画像には、偽狭窄もしくは偽動脈瘤といった偽病変が高い頻度で出現した」と述べていました。SEMARに関してはこれまでも臨床的な有用性が報告されているが、体内挿入される様々な金属について、しっかりとした検証を行う必要性があること、SEMARでは原画像と処理画像が再構成されるので、元画像を細部まで確認することが重要であるということを痛感した報告でした。ちなみに、演者の先生と合間にお話しすることが出来てちょっと質問してみました。「よく気付きましたね」と聞くと、やはり臨床で疑問に思うことがあったそうです。星野先生の言葉通り臨床での気付きから検証をされたことが判りましたし、日常の臨床において画像をしっかり確認することが臨床においても研究においても重要なのだと思いました。


招聘講演は「AI最新動向と医療画像」と題して、世界的なGraphics Processing Unit : GPUメーカーであるNVIDIA Corporationの鈴木先生がご講演された。GPUはCT装置の画像再構成に用いられており、高速な画像再構成には欠かす事の出来ないUnitです。また、GPUは、最近よく耳にするartificial intelligence : AIにおいても重要であることから、NVIDIAではAIに関する研究が盛んに行われているそうです。deep learningを導入したAIが囲碁などのトップ棋士を破ったことなどは、皆様も記憶されていることと思います。鈴木先生の講演では、AIの進歩について自動車の自動運転や、AIが作り出す絵画や人間の顔など我々に身近な話題から解説して頂きました。そして医療の画像診断分野については、Generative adversarial networks:GANs(教師なし学習で使用される人工知能アルゴリズムの一種)を利用して稀な症例の画像を作成して、この画像をAIに学習させることで、AIの精度を高めいく試みについてご紹介頂きました。・・要するにAIに学習させるにも稀な症例を集めるのは大変なのでGANsに稀な症例を作成させてAIに学習させるそうです・・。鈴木先生の講演を拝聴してAI技術の急速な進歩に驚くとともに、画像診断分野においてもCT画像の再構成だけに留まることなく私たちの想像を超えた利用方法が開発されていることを実感することが出来ました。


特別講演は「CT 検査の価値を考える -value-based medicine 時代に向けた心構え-」と題して、熊本大学大学院生命科学研究部の尾田先生がご講演されました。皆さんは、「守りの医療(Defensive Medicine)」をご存じですか? Defensive Medicineとは、主に医療過誤の賠償責任や刑事責任追及等にさらされる危険を減ずるための、医療者側の対応として行う医療行為を意味するそうです。この弊害として、他院への紹介・搬送の増加、放射線被ばくの増加、確認の検査などによる医療費の高騰が招かれ、米国では医療費の30%は無駄な診療と言われているそうです (多くの施設でCT検査が増加しているのも「守りの医療」が一因かもしれませんね)。 このため、本来必要としないCT検査や必要以上に広範囲の撮影が行われることで被ばく線量が増加、これにより検査指示を出す医師の「被ばく」に対する意識が低下してきているのも問題となっているそうです。また、最近よく報道される「画像診断の報告内容の見落し、がんの診断が遅れ患者が死亡。」など、「偶発所見」の発見や見落しもDefensive Medicineの弊害と言われています。尾田先生はご講演の中で、近年evidence-based medicine:EBM (根拠に基づく医療)が進められて来たが、今後はvalue-based medicine:VBM (価値に基づく医療)へ移行して行くとお話しをされていました。VBMでは、目的が明確でない検査を行わない、Over qualityを求めない(目的を達成する画質で良い)など、正当化と最適化が厳密に管理されます。例えば、米国の前大統領が進めた「オバマケア」ではVBMの導入によりCT検査件数は減少したそうです。診療放射線技師も、これからはVBMについて学び、知識を深めるとともに最適化に向けた撮影技術を確立し、医師と共に「価値あるCT検査」を構築していく必要があると感じました。


学会のあとは、情報交換会にも参加して楽しい時間を過ごすことが出来ました。その後は2次会に参加して熊本名物の「馬刺し」を堪能しましたが、早起きの影響もあり午前0時前には強烈な睡魔に襲われ、熊本の夜は「良い子」で終えることとなりました。

翌日は、飛行機までの時間があったので、熊本地震からの復興作業中の熊本城を外から散策し、ランチは熊本ラーメン、水前寺公園を散策し、木陰のベンチで昼寝をして(とても気持ちの良かった)、帰路に着きました。


今回は早起き!!をしてJSCTに参加しましたが、体力的にも1泊2日の熊本はかなり厳しいかと思っていましたが、想像以上に充実した時間を過ごすことが出来ました。

次回のJSCTは2020年7月11日に札幌市で開催されます。皆様も是非参加をご検討してみてはいかがでしょうか?


・・・来年は成田からLCCかな・・!?



千葉市立海浜病院 放射線科 高木 卓

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