イベント参加報告
2019年学会・研究会・セミナー参加報告
JRC2019印象記
2019年4月11日から14日の間、例年より涼しく過ごしやすい気候の中、平成最後のJRCは開催されました。今回は超高精細CT、AI(Artificial Intelligence)、線量管理のセッションとITEMを主なテーマにして参加させていただきました。
超高精細CTの一般演題では、臨床応用していくために必要な検討が多く発表されており、頭部、胸部、腹部、冠動脈など特定の部位に限らず全身のあらゆる臓器・部位で使用されていることが良くわかりました。また、スキャン方式や収集モードによる変化を捉えるうえで0.25mmスライスの物理評価は難しく、ブルーミングアーチファクトの影響などを含め慎重に測定することの重要性について議論されていました。冠動脈では具体的な心拍数と画質の関係についての発表があり、80bpm以上では従来の画質より解像度が劣化することが示され、高分解能であるが故にアーチファクトも明瞭になってしまうことを定量的に評価されていました。スキャンモードの選択やβブロッカー等のレートコントロールに重要な指標となるデータで、臨床応用につながる有用な発表と思いました。
臨床研究では、腹腔鏡手術で重要なメルクマールとなる臍部と各指標について、CTの撮影体位と実際の手術体位の違いによる位置の変化に関する検討の発表があり、術前シミュレーション用データとしてCT画像が用いられることが多いため、このような検討は外科医だけでなく、我々にとっても重要であると思いました。また、しっかりとまとめられたデータとイラストなどを用いることで、英語のスライドでも大変理解しやすく、プレゼンテーションとしても見習うべき発表でした。
本学会ではこれまで以上にAIに関する演題やプログラムをみることができ、CT領域でも新しい再構成法であるDL(Deep Learning)を応用した再構成法であるAiCEに関する研究も多くありました。AiCEが従来の再構成法と比べて、どのような特徴があるのかは大変興味がありました。MBIRのFIRSTとの比較に注目した発表の中で、さまざまなリミテーションがあることを前提に多くの質疑応答が交わされていました。AiCEは線量によるNPSの変化が少ないことが特徴として示され、解像特性としてFIRSTと同等、または超えるようなデータもありました。しかし、アダプティブな処理が入ることによる物理評価の難しさがここにもあり、DLを取り入れた再構成法の評価は今後のAI時代における放射線診療の発展にも関係する重要なテーマだと思いました。
線量管理の会場はどこへ行っても満員御礼でした。今後の法改正に関係していることもあり、会場は熱気に溢れ、大変注目されていることを実感しました。シンポジウムでは、実際に線量ソフトを用いて活用まで進んでいるご施設の報告を拝聴し、管理するといってもどこまで何を管理するのか?複数台装置を所有している場合、どのように整合性をとるのか?院内の教育と他職種との線量情報の共有、理解についてどのように進めるべきか?など、先進的な施設でもその施設の特徴やビジョンによって様々な課題をもっていることがわかりました。これらに対し、ディスカッションを通じて今後の対応や考え方を聞くことができたことは大変勉強になりました。理想的な線量管理に向けて鋭意努力されている施設の現状を知り、当院も頑張らなくてはと思いました。
ITEM会場は多くの参加者によって埋め尽くされ、キヤノンブースはいつ覗いても大盛況でした。今回は当院の新入職者を引率して様々な装置や機器を一緒にみて回る役目があり、私自身はいつものように自由な感じではありませんでしたが、ITEM会場でもAI関連の技術革新にふれることができ、現在の放射線診療はアナログからデジタルへの変遷よりも大きな革新を迎えていると感じました。真剣な眼差しで一生懸命に担当者の説明を聞き、質問している新入職者たちや、すれ違う若手の方々のエネルギッシュな行動を見ていると、新しい「令和」時代の明るい未来を予感しました。「お前も頑張れよ!」と背中を押されつつ、充実した4日間を過ごした会場を後にしました。
平成最後のJRCに参加させていただきありがとうございました。多くの学会関係者の方々に深く感謝して報告を終わりにしたいと思います。
聖マリアンナ医科大学病院 画像センター
小川泰良