2020年10月26日から11月8日まで開催されていた『JSCT 2020 on Web 日本CT技術学会第8回学術大会』の参加報告をさせていただきます。本大会は本来、北海道にて開催される予定でしたが、COVID-19の感染拡大を鑑みてWebによる開催となりました。このような状況の中で大変勉強になる講演・演題が多くありましたので、その一部をご紹介できればと思います。

 

本大会は『持続可能なCT技術 Sustainable CT technology』をテーマとしてスライド閲覧による研究発表と動画によるオンライン講演会の構成で開催されました。研究発表は『Dual Energy』、『画像解析・アーチファクト低減』、『線量評価・画質評価』、『⾼精細 CT・造影技術・画質評価』の4セッションに分かれ、各7演題ずつとなっており、非常にボリュームのある構成となっていました。またオンライン講演会は特別講演として広島大学病院 立神先生による『AI を用いた CT 画像再構成〜臨床での活用法〜』、招聘講演としてグーグル・クラウド・ジャパン合同会社 倉田氏による『データ・ドリブンによるテクノロジーがもたらす医療業界の変革』、Sponsored lectureとして静岡県立静岡がんセンター 瓜倉先生による『がんセンターにおける高精細 CT とヨード画像の臨床応用』、Product introductionとして株式会社ジェイマックシステム 箱石氏による『線量管理システム「DoseChecker」のご紹介』、リフレッシャーズセミナーとして華岡⻘洲記念病院 山口先生による『冠動脈 CT update』、Techno-clinical lecturesとして岐阜大学医学部附属病院 三好 先生による『腹部造影 CT の現状と未来』、静岡県立静岡がんセンター 瓜倉先生による『CT 技術を臨床に生かす』となっており、講演動画だけでも7本ありこちらもボリュームがある構成となっていました。これだけの内容は1日には詰め込めないのでWeb開催による恩恵だなと感じました。

 

それでは研究発表からいくつかの演題をご紹介させていただきます。まず『Dual Energy』のセッションから宮崎⼤学医学部附属病院 藤崎先生による『Deep Learning based Spectral CT におけるヨード密度定量解析の精度の評価』をご紹介します。キヤノンのDeep Learningを用いた高速kVスイッチング方式のDual Energy CTで得られるヨード(水)密度画像のヨード密度値が線量変化や対象の大きさが変化したときに、真値と比較しどのように変化するかを検討した発表になります。ヨード密度を変化させた際は15%以内、線量を変化させたときでも誤差は14%以内と示しており、結果としてDeep Learning based Spectral CTは高い精度でヨード密度の定量解析が可能とされていました。今回は線量固定での検討でしたが、キヤノンのDual Energy CTの特徴としてAECが使用可能なので、今後のAECを用いた検討が行われることが期待されます。

 

次に『画像解析・アーチファクト低減』のセッションから神⼾⼤学医学部附属病院 ⽯川先生による『Deep Learning Reconstruction のストリークアーチファクトに関する基礎検討』をご紹介します。こちらの検討では低線量から高線量で撮影した高吸収体によるストリークアーチファクトの発生している画像をAiCEとFIRSTで再構成しArtifact index(AI)、relative Artifact index(AIr)を用いて定量化し、アーチファクトの量やアーチファクトの低減効果を比較検討した発表になります。この検討では低線量においてAiCEのAIがFIRSTよりも低く、AIrは同程度であることから、低線量においてストリークアーチファクトに関する特性に優れると示されていました。質問コメント欄では、AiCEやFIRSTの解像特性も影響があるのではないか?など熱い議論が行われており、再構成の奥深さを感じました。今後もこのような検討が進むことで、ケースごとに最適な再構成を選択することが可能になるのではないかと感じる発表でした。

 

次に『⾼精細 CT・造影技術・画質評価』のセッションから⼤原綜合病院 村松先生による『Deep Learning Reconstruction を⽤いた超⾼精細 CT における肺気腫定量解析: 逐次近似応⽤再構成法との⽐較』をご紹介します。肺気腫の定量解析においてノイズの多くなりがちな超高精細CTとDLR(AiCE)の組み合わせで効果的にノイズ低減を実現し、解析に有用であったという発表でした。HIR(Hybrid iterative reconstruction)ではノイズ低減と空間分解能はトレードオフであったが、DLRは空間分解能を保持したまま効果的なノイズ低減をしていることをファントム実験で物理的に示し、臨床評価では呼吸機能検査と比較し、DLRのほうが高い相関を示す結果となっていました。物理評価・臨床評価を行っていることで説得力の高い発表であると感じました。Precisionユーザーの私としても超高精細CTとDLRの組み合わせはとてもきれいな画質であると感じていましたが、なかなか臨床に有用なところを見いだせずにいましたが、このような定量評価に影響があることは超高精細CTの有用性を示しているのではないかと感じました。

 

続いてオンライン講演会から紹介をさせていただきます。まずは特別講演の『AI を用いた CT 画像再構成〜臨床での活用法〜』です。現在AIを用いた画像再構成(DLR)を提供しているのはキヤノンとGEでそれぞれAiCEとTrueFidelityという名称になります。本講演では臨床におけるDLRの活用法を多くの臨床例とともにご紹介いただきました。体格が大きく線量不足に陥りやすい状況でも従来の再構成法と比較して、効果的なノイズ低減が可能でDLRは低線量撮影時に強いとのことでした。特にCoronary CTではDLRを使用することで線量を1/3程度まで低減可能ということで、実際の臨床画像も遜色ない画像であったので、大変驚きました。低線量で行う4D撮影の画像もノイズ低減が可能で、安定した画質提供が可能とのことでした。またMBIR(FIRSTやVeo)との使い分けとしてMBIRは高コントラスト領域に強いが線量低下により画質劣化しやすく、DLRは低コントラスト領域に強く、線量低下時も画質を担保できるということで、冠動脈を例に挙げ解説されました。ステントの評価は高コントラストになるのでMBIRが有用で、冠動脈は通常線量ではMBIRとDLRは同等、低線量になるとDLRが有用であるとのことでした。最後には適切なDLRのネットワークの構築によりさらなる画質の向上と被ばく低減が期待できると締めくくっており、DLRが一般的になっていくのではないかと感じました。

 

続いてSponsored lectureの『がんセンターにおける高精細 CT とヨード画像の臨床応用』をご紹介します。超高精細CTの有用性を物理特性と多くの臨床画像を供覧されながら解説いただきました。超高精細CTは造影された細血管の描出に有用で乳房再建時の深下腹壁動脈穿通枝皮弁の評価では有意に末梢血管の描出が向上していました。3Dで末梢血管が描出されているのが確認でき、超高精細CTのすごさを体感できました。また臨床例の供覧では、5mmでも超高精細CTは高い描出能を有しており、薄いスライス厚になるとより細血管や小さな病変をはっきりと描出していました。高い描出能を用いて、肺腫瘍ではすりガラスと充実部を明瞭に描出することは病期分類には重要であると解説されました。当院でも超高精細CTが稼働しており、画像のきれいさは感じていましたが、改めてその威力を感じました。また、この画像のきれいさが正確な診断につながるのではないかと感じました。SURE Subtractionを使用したヨード画像については、非剛体位置合わせによって非常に高精度な位置合わせを行うことが可能で精度の高い定量結果を示しており、DECTに負けない客観的な定量評価が可能とのことでした。

 

最後にリフレッシャーズセミナーの『冠動脈 CT update』をご紹介します。冠動脈CTの役割が年々大きくなり、検査も増加しています。冠動脈CTで明瞭に冠動脈を描出するために理解すべき様々な条件について、詳細に解説されていました。心拍変動や管球回転速度の影響などを詳細なデータともに解説いただきました。撮影条件以外にもβブロッカーの種類やその影響、再構成心位相の選択の仕方などについても解説されており、冠動脈CTのすべてを学べる内容となっていました。また低管電圧撮影やDECT、CT-FFRなど最新情報の提供もあり、リフレッシャーズセミナーの名にふさわしい内容となっておりました。

 

Webでの開催になりましたが、とても充実した内容の大会となりました。どの講演・発表も興味深く、CT技術の奥深さを感じました。特に講演からはすぐに臨床に使用できるポイントがいくつかあり、役立てていきたいと感じました。

杏林大学医学部付属病院 清水裕太