2019年10月17日から19日の3日間、大阪府大阪市北区の大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)において第47回日本放射線技術学会秋季学術大会が行われました。今回は『Let’s lead smart medical care through our imagination and creativity –未来へ−』として、放射線技術学に携わる私たちが想像力と創造力により、この分野の未来を切り開いていこうという壮大なテーマでした。今回、CT関係の研究発表、シンポジウムや線量管理のセッションを中心に参加してきましたので、ご報告させていただきます。

 

新横浜6:11分発の新幹線に乗るため、自宅を出たのは5時前。まだ外は真っ暗でした。普段は最寄りの駅までバス通勤ですが、その時間にバスがあるはずもなく、徒歩で30分の道をキャリーケース片手に行くのは、会場に着く前から疲れてしまう!ということで、送迎タクシーに甘えてしまいました。会場に着いたのは9時過ぎでしたが、1日目の早い時間からCTのセッションは多くの参加者がみられました。一部のランチョンセミナーの整理券はもうなくなっているほど。

 

CT関係の研究発表では、Dual Energy CT(DECT)に関する報告が非常に多く、みなさんの関心が高い分野であると感じました。私もその一人です。多くの報告がある中で、『DECTを用いた冠動脈STENTの鑑別に関する基礎検討』は非常に興味深い内容でした。冠動脈治療に用いられているSTENTが複数ありますが、DECTを用いてSTENTの種類を鑑別するというものです。Canon社製のCT装置に搭載されているBasis material analysisを用いて解析する事で、STENT合金の素材の割合と原子番号から計算された実効原子番号によって識別できる可能性があるという報告でした。

急性膵炎の重症度判定にDECTを用いる報告がありました。急性膵炎の重症度判定は、血液検査、バイタルや造影CT Grade分類によって行われています。このGrade分類は読影医の視覚評価によって行われているのが現状ですが、DECTを用いてヨード濃度を定量評価することで、より客観的に評価ができるそうです。DECTが今後どの施設でも当たり前のように撮影されるようになれば、ガイドラインも変わっていくかもしれませんね。

 

そして、2日目の私の楽しみにしていたランチョンセミナーが『しっかりと理解しておきたいCT技術 第9弾 Dual Energyの真髄〜原理と活用法〜』です。金沢大学の市川先生のご講演で、非常に分かりやすいお話でした。どうしても聞きたい内容でしたので、少し早めにホテルを出て、整理券をゲットしました。物質は、X線エネルギーによってそのCT値が変化し、その変化の度合いは物質固有です。よって、それが分かれば物質同定が可能となります。当然、Single Energyの従来CTでは不可能ということです。物質の線減弱係数μは、光電効果とコンプトン散乱の2つから求める事ができ、それぞれに物質固有の係数が係っています。その2つの係数を求めるために、2種類のエネルギー(Dual)が必要です。むしろ『2種類だけでいい!』のです。DECTの登場で様々な解析が行われていますが、新しい技術が登場し『この装置に搭載されているアプリケーションを使うと画像ができる!』って事もあるのではないでしょうか?しかし、なんだかモヤモヤするなかで使用しているもの事実だと思います。DECTとはそもそも何であるのか。私たちが見ているのは何なのか。そんなモヤモヤを解決する手段として、原理をしっかりと理解する事で霧がかった状態からスッキリとDECTの画像を見る事ができると仰っていました。DECTの真髄とは何かを知る事ができ、非常にあっと言う間の50分でした。

 

第73回撮影部会のワークショップにも参加してきました。『救急診療におけるCT検査の役割を再考する』をテーマに、撮影の適応基準や撮影範囲の設定等の残存する課題を踏まえ、GALACTICに掲載されている外傷全身CTを中心に、その役割と今後の展望を再考する内容でした。その中で、バックボードの有無で線量が10~15%増加することや、必要に応じて低管電圧撮影を用いることなどが挙げられていました。中でも、外傷全身CTにDECTが用いられている事には非常に驚きました。次回のGALACTIC改訂では、DECTの内容が盛込まれるのでしょうか。施設事情が様々であり標準化はなかなか難しそうですが、楽しみです!

 

造影技術のセッションでは、冠動脈CTの造影条件を心エコーの指標を用いて補正する試みを興味深く聞かせて頂きました。造影条件は体重や除脂肪体重などの体格に基づいて決定されているのが一般的です。しかし、心機能によってCT値にばらつくことは日常業務でよく経験しますよね。心機能の中で心エコーのStroke Volume(SV)が冠動脈のCT値と高く相関しているとのことで、SVに基づいて造影条件を補正していました。結果、心機能によらず冠動脈内腔の造影効果のバラツキが低減し、最適化ができたとのことです。フロアからは血液検査のBNP値が心不全の指標として用いられており、BNP値を含めて検討する事で更に良好な結果が期待できるのではないかとの意見もありました。心機能による造影能のばらつきは私も悩まされている一人ですので、参考にしていきたいと思いました。

 

第49回放射線防護部会のシンポジウムは『新しいJapan DRLsに向けて』として、DRLs2020についての内容が取り上げられていました。立見がでるほど、参加者が多くどの施設でも関心が高いように感じました。医療被ばくによる線量の管理と記録を行っていくうえで、DRLs2020の役割は大きいものになってくると思います。また、新たに外傷全身CTと肺塞栓造影CTが新たに追加される予定との報告がありました。これは、施設毎で撮影線量のばらつきが大きく、この機会に適正化を行うためであるそうです。小児のDRLsに関しては、年齢だけでなく体重区分も入れていく方向で進んでいるみたいです。DRLs2015から5年経過し、CT装置の多列化や逐次近似再構成の導入が大きく進んできました。DRLs2020ではこの影響が大きく反映されるものになるのではないでしょうか。

 

今回の秋季学会は『ありがとうキャンペーン』と称して、開会式から閉会式まで参加した参加者に対して皆勤賞を贈呈する試みが行われました。毎朝のプロモーションビデオに映し出されるキーワードを全て解答することが条件でした。3日間のそれぞれのキーワードは『グ』、『リ』、『ゴ』!まさかのグリゴで、2日目までで予想しようとしても難しかったですね。私はキャンペーンに参加できませんでしたが、見事全問解答された方、おめでとうございます!

大阪開催だけあり、福西大会長のユーモア溢れる試みに、非常に楽しませて頂きました。

 

最後に、この3日間どっぷりCT漬けでした。楽しかったのはもちろんですが、沢山の刺激を受けて帰ってきました。私も頑張らねば。

横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部

長谷川 伸明

JSRT2019-02