令和元年9月14日から16日の三日間、埼玉県さいたま市大宮区のソニックシティにおいて第35回日本診療放射線技師学術大会が,大変過ごしやすくなった気候の中で行われました。さいたまパワーによって本学会の来場者は約2500名と大変多くの参加者が会場を賑わせていました。研究発表では若い世代の方が精力的に発表されており、座長の方々も一緒に新しい風を吹かせる、令和元年らしい次世代への幕開けを感じさせる学会でした。

 

今回、CT関係の研究発表と、線量管理、人工知能(AI)、死亡時画像診断(Ai)のセッションに可能な限り出席しましたので、私見も交えながらその内容について報告させていただきます。

 

CTの一般演題では、臨床画像データそのものを利用してノイズ特性を評価する研究発表がありました。非線形データの物理評価法について臨床画像との対比や評価方法そのものについて議論があるところですが、定型的推論からの脱却を目的とし、変化量を差分データから抽出してNPSによって評価する方法を検討されていました。再構成の手法のみならず臓器の特徴も影響する可能性や、評価目的を明確にすることなど手法そのものについても今後の研究が待たれるところですが、より現場で活用しやすい定量的評価が可能となることに大きな期待が寄せられていました。

Deep learningの手法を取り入れた再構成法であるAiCEについての研究発表が出てくるようになり、急速に普及してきていることが感じられました。基礎的検討の発表において、ノイズ特性と解像特性の関係について検討されており、空間分解能は教師データの画像特性と近似して出力画像に反映していることが示されていました。また、低管電圧使用時の画質評価の発表もあり、体軸方向の解像特性、線量依存性と合わせた物理指標との関係性が興味深く、画像特性を理解することでより最適な臨床応用に繋がると感じました。

線量管理に関する発表では、自施設内の検査プロトコルを病変検索用プロトコルと経過観察用プロトコルに分けて、検査目的別に運用することで、どのような線量変化をもたらすかを検証した研究があり、部位別ではなく目的別にプロトコルを調整して適応することで有意に線量指標を低減することが示されていました。今後の診断参考レベルの設定でも目的別の線量設定について注目するところでありますが、ディスカッションの中で、目的別プロトコルの作成はプロトコル数の増加を招くため,適応の管理とプロトコル変更のタイミングをどのようにコントロールするかなどの議論があり、放射線科医のみならず臨床医との連携もひとつのポイントだと思いました。現在の線量管理、プロトコル管理の流れに乗ってこの難題を乗り越えることができれば、現場レベルの更なる線量最適化が進むことが期待できると思いました。

ポスター発表で注目したのは、骨挫傷イメージ(BBI)のパラメータ設定と解析手順の報告です。ポスターは,大変鮮やかなブルーの下地で整理されて見やすいデザインでした。現在のDual Energy解析画面は、各設定値を変更した結果を比較して評価することが難しいところを、処理後の画像を並べて供覧することで大変分かりやすい内容になっていました。80列CTの画像ベース解析に関する情報もあり、熱い想いとDual Energy解析の実施環境が整うことで、より多くの施設で不顕性骨折の正確な早期診断が期待できる内容となっていました。

ポスター賞を受賞した心外膜脂肪(EAT)と心疾患発症の関係に関する研究では、臨床の画像データ、生理データを利用して安定性狭心症のリスクについて、従来の石灰化スコアとの対比とイベント発生の関係を示されており、EATは石灰化スコアより有意な相関があることを示されていました。物理的検証だけでなく、臨床研究も我々診療放射線技師の幅を広げることの重要性について明示したものと感じました。

 

医療法の改正を間近に控え、線量管理や安全管理体制の有り方について大変注目されていますが、線量管理関係のセッションはどこも満員御礼で、入ることすら難しい会場もありました。業務の増大や院内制度の変更で大変な時期ですが、これらの取り組みは診療放射線技師の存在意義が高まることでもあるため、決して後ろ向きになってはいけないことだと実感しました。線量管理ソフトの取り扱いベンダーは30社ほどあるとのことで、ランチョンではハンズオンセミナーがありました。機器展示会場でも一部ベンダーの線量管理ソフトを実際に触ることができ、想像より使いやすく、管理機能が充実している印象を受けました。しかしながら、各施設導入資金について切実な問題が浮き彫りになってきています。線量管理システムありきという風潮について本当に全ての施設で必要なのかといった議論があり、線量管理ソフトのみでなく、装置との連携や線量情報の整理を強化するためにRISの有効活用が大きなポイントではないかと思いました。いずれにしても、使用するソフトを最適に動かすためには環境整備が必須であり、撮影プロトコルの整合性、検査オーダーの整備、被ばく管理への組織全体の意識向上など学ぶべきことが多くありました。

 

2つのエーアイについて拝聴しました。「人工知能(Artificial Intelligence : AI)時代の画像管理について」のセッションでは、AIとPACSを組み合わせた自動診断支援の臨床稼働が現実的なものになってきていますが、AIはその能力が時間とともに変わってしまう性質があるため、システムそのものをどのように管理すべきか、どこまでAIを介入させるのか、精度をどこまでとするのか、といったところを固めておかないとシステムに振り回されるとのことでした。そのため、事前準備、導入後管理がとても重要で、臨床データとして自動診断したい疾患のパターン別教師画像の準備や精度管理方法の確立など、AI時代を迎えるにあたり、診療放射線技師がどのようにこの領域に関わっていくのかしっかり考えていかなくてはならないと思いました。

もうひとつのエーアイ、「死亡時画像診断(Autopsy imaging : Ai)の認定技師から専門技師制度への展望」のセッションで多くの興味深い講演を拝聴することができました。我が国の人工知能(AI)は先進国の中でも最低レベルだと聞くことが多いですが、死亡時画像診断(Ai)の技術は世界の中でも進んでいるとのことでした。しかし、その体制や法整備はまだまだであり、不十分な点が指摘されていましたが、死因究明法改正の施行が来年4月に控えており、医療法改正で期待されていることと同じく、Aiも診療放射線技師の職域や新しい分野での活躍の場が今まで以上に広がることが期待されています。警察関係者との交流の話も興味深く、地域によっては警察主催の講習会に診療放射線技師が参加することも少しずつ増えているとのことでした。これまで以上にAiや死因究明に関係する多職種が強固に連携することが重要になりますが、茨城Ai研究会の活動報告では実際に警察関係者、法医学者、救急医、放射線科医、診療放射線技師の多職種連携が実現されており、症例検討会や意見交換会などその活動内容に大変驚きました。

 

本学会期間中も恒例の「大人のCT倶楽部in大宮2019」が開催され、参加させていただきました。新しい出会いもあり、同じ想い(志)をもった方々と沢山お話することができました。「大宮の夜を熱くしろ!」とのごとく、会場は熱い歌と熱気で溢れ、大変盛り上がって楽しい時間を過ごしました!

 

以上、長くなりましたが、私からの学会参加報告とさせていただきます。

最後になりますが、学会運営に携わった関係者の皆様、研究発表やご講演された皆様、大変充実した3日間になったことを心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

聖マリアンナ医科大学病院 画像センター

小川 泰良

 

35th_技師会