2019年8月3日(土)にGlobal Standard CT Symposium 2019 (GSS 2019)が開催されましたので、参加報告をさせて頂きます。

 

このGSSは、キヤノンCTの最新技術に関して技術的側面や臨床的有用性をユーザーが発表して、ディスカッションを進め理解を深めていくという趣旨のシンポジウムであり、毎年夏の時期に開催されています。メインの東京会場のみならず、全国6か所のサテライト会場、さらにWeb配信も行われ、キヤノンの熱い意気込みを感じました。私は東京会場に参加したのですが、とても広い会場にも関わらず、開始時には席がほぼ埋まる程参加者が集まりユーザーの関心の高さも感じました。

 

プログラムは、大きく分けて2部構成であり第一部(Session1)は、「ADCT、高精細CT、そしてAIが臨床にもたらしたもの」と題して、主にDeep learning画像再構成技術(AiCE)、超高精細CT(Aquilion Precision)、そしてVitreaを用いたBayes推定Perfusionに関する講演でした。どの講演も魅力的な内容ばかりでしたが、ここでは川崎幸病院 脳血管センター成清道久先生の「急性期脳梗塞における画像診断から治療までのパスウェイ」と題した講演内容を紹介したいと思います。

この講演では、まず脳卒中診療領域で話題となっている急性期脳梗塞に対する血栓回収術のエビデンスや有用性を紹介していました。海外の研究結果より血栓回収術の適応時間が、従来の発症時刻/最終健常確認時刻6時間以内から、「条件」を満たせば16時間以内(場合によっては24時間以内)の症例に対しても適応となった。この「条件」というものが虚血コア体積であり、いわゆるPenumbra領域の評価になります。虚血コア体積の評価には、海外ではRAPIDと呼ばれる専用の解析ソフトを用いることができますが、日本では未導入のため、代わりの手段が必要となります。Vitreaには、Bayes推定法を用いたCT-perfusionの解析ツールが用意されており、虚血コア領域の抽出と評価が可能となります。講演では、Baysian mapがMRIの拡散強調画像を反映した所見を示しており、術後の後遺症なども評価できると紹介していました。急性期脳梗塞の症例では、現在多くの病院でMRI firstとなっているかと思いますが、川崎幸病院では、Aquilion ONEによるCT-Perfusionを導入してからCT firstに運用を変更し、時間的要素がとても重要な局面での時間短縮に大きく貢献していました。従来Penumbra領域の評価は、観察者が定性的(視覚的)に評価を行っていましたが、このようなCT-Perfusionの解析ソフトを用いることにより定量的な評価が可能となり、血栓回収術の適応や予測し得る後遺症なども正確に判断できると思いました。今後このような技術が広まることにより、より多くの施設でCT-Perfusionが行われるようになり、迅速で質の高い脳卒中診療が行われるようになることを期待したいと思います。

 

第2部(Session2)では、「新たなDE技術: Deep Learning based Spectral Imagingの可能性」と題して、2019年7月から新しく使用可能となったRapid kV switchingを用いたdual energy CTに関する講演がありました。広島大学大学院 檜垣徹先生からは、このSpectral Imagingの原理と特徴について、藤田医科大学 放射線部の松本良太先生からは、ファントム実験の結果と初期使用経験について、そして広島大学大学院 中村優子先生からは主に肝臓領域の症例画像について、それぞれ講演していました。画像工学の研究者、診療放射線技師、医師、それぞれの立場からSpectral Imagingを語っており、どの講演もとても分かりやすく、勉強になるものでした。全てを紹介するといくら紙面があっても足りなくなってしまいますので、私からは簡単に報告させてもらいたいと思います。

キヤノンCTでは、従来X線管球の1回転毎にHigh kVとLow kVの切り替えを行っていましたが、新方式では、1回転中にHigh kVとLow kVを高速に切り替えてデータ収集を行うようになりました。一方で、high kVとlow kVをあまり早く切り替えすぎてしまうとアーチファクトの発生要因となり、空間分解能も低下するデメリットがあります。そこで、新方式ではあえてkVのスイッチングを緩やかにしてエネルギーの分離精度を向上させました。エネルギーの切り替えの過渡的な部分のデータ欠損に対しては、Deep Learning技術を用いてデータの復元・推定を行うというのが基本的な考え方であるそうです。エネルギーの切り替えを緩やかにすることにより、AECの併用も可能となることで、従来の技術からの大きな躍進となりました。松本先生は、ファントム実験や臨床画像を通じて、Deep Learning Spectral CT画像がルーチンでの活用は十分期待できると評価しており、特にLow keVの画像は、臨床的に有用であると述べていました。ただし、Low keV画像のノイズ低減、適応部位やkeVの選択などには課題が残されているようで、技師や医師の裁量と判断が需要であると感じました。この新しいSpectral CT Imagingは、非常に楽しみな技術ですが、従来のSingle energy CTの持つ画像情報を担保できているのか、そしてそれを超える情報をどれだけ得ることができるのか今後の発展に期待したいと思います。

 

このGSS2019は、3時間程の講演でしたがどれも興味深い内容ばかりであり、あっという間に時間は過ぎていきました。GSSを振り返ると5年前にはFIRSTの開発やSEMARについて、3年前にはAquilion ONE GENESISの臨床応用について講演されており、今では当たり前のように臨床で使用されているものばかりでした。新ためてキヤノンCTの進歩の速さを実感すると共に、今年取り上げられたDeep learning技術やSpectral Imagingも数年後には一般的に臨床に使われていることを楽しみにしたいと思います。

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国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 放射線部

川内 覚